大判例

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高松高等裁判所 昭和28年(う)718号 判決

原判決の判示事実、これを認めた証拠、法律の適用孰れの点からするも昭和二八年二月一二日笹元義に対する発砲事件なるものを被告人の犯行なりと認定した形跡は毫も存在しないからかかる事実の認定のあることを前提としてその認定を誤認であるとする論旨は帰するところ原判決を誤解したというの外ない。論旨は理由がない。

(中略)

同(B)弁護人の控訴趣意第三点について、

(一) 論旨九、証拠調が違法であるとの点について、

記録を調べると本件公訴事実は被告人は昭和二八年二月一三日高知県香美郡暁霞村大字古井通称「井口谷」と称する林道上において中西時政を背部から所携の猟銃で射殺した上同人所有の現金十万二千円を強取したものであるというのであるが、昭和二八年六月一一日原審第三回公判調書によると原審検察官は被告人が昭和二八年二月一二日殺人未遂事件を犯していることについて、(一)証拠物として黒オーバー、鉛筆、(二)証拠書類として刑事訴訟法第三二一条第三項により司法警察員松本勝真作成の実況見分調書、(三)同法第三二二条により司法警察員に対する被告人の第四、五回供述調書、(四)被告人の供述の証明力を争う為同法第三二八条により司法警察員西岡覚馬外三名の各捜査報告書及び図面の取調を請求し、これらは孰れも同日の公判廷において異議なくその証拠調の為されたこと、並に昭和二八年五月二一日附検察官の証人尋問請求書により右殺人未遂事件なるものを立証趣旨として証人松本勝真外十七名の証人尋問請求のあつたことが孰れも明らかであり、また記録によると右証人尋問もその後異議なく行われたことが認められる。そこでその適否について考えてみると、起訴せられない犯罪事実についての証拠調は被告人の防禦の範囲を拡張することは免れないけれどもその立証事項が起訴事実と関連があり、且これを取調べることによつて起訴事実につき偏見または予断を生ぜしめる虞れのない場合はその証拠調を違法とすることはできないものと解すべきである。ところで本件において所謂殺人未遂事件について行われたという前掲各証拠を綜合して考察すると公判調書並に証人尋問調書には殺人未遂事件そのものの証拠調を請求するかのような記載があるが、それは表現または記載が妥当を欠ぐに止まり、究極の立証とするところは右殺人未遂事件と起訴にかかる本件強盗致死事件を関連ある一連の行為として前者を証明することによつて後者の犯意と情状特にその計劃性を立証しようとしたものと認めるのが相当であり、右証拠は何等関連性のない前者を証明することによつて後者の犯罪を臆測推断させるものとは認められないから右証拠調を違法であると主張する論旨は採用し難い。

(二) 量刑不当の点について、

本件犯行が原判決認定のような事情から行われたこと及び記録により認められる諸般の情状殊に被告人の家庭環境と被告人が被害者中西時政のもとで働いた木材搬出の労賃について争を生じ本件犯行に至つたこと等を彼此考慮すると犯行の結果は洵に重大であるが被告人に死刑を科した原審の科刑は量刑重きに過ぎ、被告人に対しては無期懲役を選択するのが相当と思われるのでこの点において原判決は破棄を免れない。

論旨は結局理由がある。

(裁判長判事 三野盛一 判事 谷弓雄 判事 合田得太郎)

<以下省略>

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